デヴラとヒューロンの面会

fhlprofile.jpgフェリシア・ハジラ=リー
2014/12/02 16:11:13

デヴラ、ヒューロンでの面会

キャサリン・ファンは複雑な心境だった。この作戦を指揮していたにも関わらず、そこから取り残されたと感じていた。エイダの支援によってナイアンティックの残骸を山分けにした際に一度話したきりで、ファンはデヴラ・ボグダノヴィッチに会ったことはなかった。だがユェン・ニィは、CERNでボグダノヴィッチ博士を監督する立場にあった。

つまり、この件に関してはニィが優位にあった。

ファンはそれが気に食わなかった。

ニィは競合する相手だったのだ。

ヒューロン・トランスグローバルのややこしい政略によって、ファンは彼女の上司という事になってはいたが、ニィの特殊な立場はファンにとって煩わしいものだった。そしてその立場は、彼女がナイアンティック計画に関与していたこと、ましてやそれ以前に国家情報局(NIA)ディレクターであった事に少しも由来するものではなかった。中国企業であるヒューロンにあって、国家情報局は不思議にも充分に多大な価値を誇っていたのであるが。ヒューロンが中国人を減らす方針であったのか、あるいは政府を囲い込んでおくためにアメリカとの裏のつながりを利用したものか。それはそのどちらかとは限らない。

あるいは、ニィは中国政府からの二重スパイなのだろうか?

いずれにしろファンは、そんなもの消えてしまえ、と思っていた。ナイアンティック計画、ハンク・ジョンソン、デヴラ・ボグダノヴィッチ、そしてユェン・ニィも。彼女はもう、エックスエムのことなど聞きたくはなかった。

「良かったわね、ハンクはインドで無事のようですよ...」ニィは言った。それは予定通りのシナリオだったが、ファンはニィの言い方が気に入らなかった。あたかも彼女自身がそう思っているかのようだ。ハンク・ジョンソンの死を望む者がひとりもいないのは奇妙なことだった。実際にファンはアントワーヌ・スミスに対しジョンソンをインドで殺害するよう指示したのだが、彼は従わなかった。より正確には、指示書には殺さぬようにとしながら言外に含めた意図を汲まなかったのだ。ジョンソンの死をファンが直接的に指示することはできなかったが、その結果を彼女が望んでいる事は明白にしたはずであった。

「ヒューロンさん、お気遣いは結構ですわ」デヴラは答えた。

「私はその件については何ら関与しておりませんもので...」ニィは言った。これはシナリオにない言葉だった。ニィが逸脱したのだ。だがそれに対するボグダノヴィッチの反応は、プロファイリング・コンサルタントが予測していたものとは違っていた。ファンはこれが間違いの始まりでないことを祈っていた。

「ええ、スミスさんがなさった事ですものね」と、そのアメリカ人女性は返したのだ。予測されていた反応はない。そんなはずはなかった。ボグダノヴィッチ博士は才能あふれる研究者以外の何ものでもない。無論彼女がハンク・ジョンソンについて掴んでいることについては収集済みだった。彼女は、そのアメリカの考古学者とは長い付き合いだった。彼らが──アメリカ人が曖昧に言うところの──「関係」を持っているかどうかについては不明であった。アメリカ人同士の、あやふやで面倒な親愛の作法に半時間を潰された。ニィはシナリオに戻った。「デヴラ、本日は協力をお願いしたく...」

「私はあなたが好きですし、尊敬もしています。ヒューロンはあなたにとって良き棲み家となるでしょう。あなたが思う以上に私たちの利害は一致しているのですよ」カメラの角度からその顔はファンには見えなかったが、ニィは誠実な様子だった。

ドアが開き、カメラが一瞬閃いてボグダノヴィッチの目をくらませた隙に、ニィはウォンの心理戦部隊が計画していた通りに暗がりへ滑り込んだ。「友人を連れ去る」事は、打ち合わせ済みであった。

デヴラは車から降りた。彼女はウォンの姿に驚いた様子だった。勝った。彼女は周囲を見回し、スロープを見上げた。逃げ道はなかった。嵌められたと思ったのだろう。だが不思議と不安な様子がないばかりか、ボグダノヴィッチはタフに振る舞っていた。彼女は自ら罠に足を踏み入れて来たのだ。

「またお会いしましたね、ボグダノヴィッチ博士」ウォンは腰をかがめて言った。デヴラは手を差し出したが、ウォンは出さなかった。慣習は通用しない、彼女が自分のテリトリーにはいないことを思い知らせたのだ。

ファンはマジックミラー越しの透視室に待機していた。携帯電話を覗いて、メールをチェックすることを考えた。彼女は電子機器に依存しないようにしていた。電話をチェックするのは緊張のサインだ。ファンは何かをするのに他人の顔色など窺わない人間だった。尋ねるべき質問、出すべき指示について考えようとしたが、上手く行かなかった。それでただ座っていた。落ち着きを見せようとして。エグゼクティブ・ガイドには、その落ち着きが何より彼女の権力を物語っていると語られ、彼女もそう考えていた。仮に彼女の権力が脅かされていたとしても、それを見せずにいることができた。

デヴラが部屋に連れられて来た。彼女は迷うことなく席を選んだ。ウォンはデヴラをファンのいるミラーの前へ導こうとしたが、デヴラは逆らった。彼女はそちらに座ろうとはしなかった。ファンは図らずもそれを楽しんでいた。ウォンの自信が傷つけられた素振りに気づいたのだ。事前の打ち合わせでは、デヴラがその席につくことは想定されていなかった。ファンはモニター越しにこの面接を見ることになる。

「ミセス・ボグダノヴィッチ、あなたからは何をご提供いただけますかね?」さり気なく呼び方を間違えていた。こちらが彼女のことをほとんど知らないかのように。

「私は結婚していません、ウォンさん」彼女は返した。「それに、こういったお話であれば私のことはボグダノヴィッチ博士と呼んだほうがふさわしいかと」

デヴラがもし、打ち合わせどおりに罠にかかり、恐怖や怯えを感じていたとしても、それは態度に現れる事はなかった。

彼女は続けた。「ご質問への答えは簡単ですわ、フォンさん...(故意に名前を間違えたのだろうか?)救済。救済です、ウォン博士。ナジーアが私たちを見つけたなら、私たちは滅ぼされるでしょう」

透視室のエンジニアが、声のストレス分析からは嘘をついている反応は検出されていないと述べた。

ファンは改めて興味深く観察した。「我々はビジネスなのです、ボグダノヴィッチ博士。我々にとって重要なのは収益であり、実存的な超次元の脅威ではないのです。ポータルを弱体化する事ができるのなら、強化することだってあなたにはできると思うのですが」

「そうはいきません」彼女は答えた。

ウォンはたじろいだ。目論見は外れた。汗が出始めていた。ファンは自分が楽しんでいる事に気づいた。このブロンドの女性には、ファンが好感を持つものがあった。

ウォンは失望をどうにか押し隠した。「まだエックスエム・ワクチンをお持ちで?」

「お互いが馬鹿ではないという仮定の下でなら、この会見はより良くなると思いませんか?」とデヴラは返した。

ウォンは後ずさった。ジャブに怯んだボクサーのように。「あなたが馬鹿だなどと思ってはいませんよ。ですが、あなたがコントロールできない状況になることを恐れていることもわかります。まだあるんでしょう?あなたの方から申し出る羽目になるかもしれません。もちろん、こちらだって探し出しますがね」ファンは微笑んだ。この時には、このアメリカの科学者を積極的に応援していた。

「ミラーの向こうには誰がいるの?」デヴラは尋ね、振り返った。まるでガラスの向こうが見えているかのように、ファンには見えた。

「デヴラ、最後のワクチンはどこに?」

ボグダノヴィッチは立ち上がった。彼女は長身だった。懐に手を伸ばした。透視室は反応し、武器の有無をチェックした。ボグダノヴィッチは煙草を取り出し、火をつけた。ゆっくりと、ごく自然に。その瞬間を楽しむように。彼女はウォンに向かって煙を吐き出した。彼の方へ歩み寄りながら話しかけた。「ヒューバート・ファーロウに渡してあるわ。せいぜい頑張って彼から奪うことね。私が死んだ場合の指示は出していないわ、結果を無作為にするためにね。彼がどうするかは神のみぞ知る。私が死んだと知ったら彼はどうするでしょうね」

ウォンは壁に後ずさった。追い詰められたように。屈辱、だがそれ以上に恐怖を憶えているようだった。

「あいつは何もできない。あなたの生死を知る方法がないのだから」ウォンは言った。うまい返しとは言えなかったが、他に返しようがなかった。何か返さねばならなかった。

「秘密というのは漏れるものなのよ、ウォン博士。守ろうとさえされないこともある。覚えておきなさい。私が死ねば、彼にはわかる。何事もなければ、彼は私の不在を感じ取るでしょう」それから彼女はミラーに向き直り、ふたたび煙を吐いた。「でもお察しの通り、ファーロウには与えていないわ」

「ファーロウに与えなかったのなら、どうするつもりだったんだ。交渉の余地はあるだろう」

彼女は振り返り、ウォンの顔の前に手を上げた。ウォンは凍りついた。彼女のもう一方の華奢な指が、薬指に触れた。「これは結婚指輪ではないの、ウォン博士」隠しこまれたバネが指先で弾かれ、針が飛び出した。「毒殺用の指輪よ」

ウォンは自由を失った。ドアへ逃れ、開こうとした。ドアはロックされていた。

「それを私に使うつもりか?」

ボグダノヴィッチは微笑んだ。「いいえ」

彼女は鏡に向き直った。指輪を、ファンの頸動脈のあたりに突き出した。傷口から血が滴り、ファンはヴァンパイアの映画を思い出していた。ボグダノヴィッチは微笑んでいたが、その笑みは闇からのものだった。その瞳から闇が染みだしてくるかのようだった。ファンは目をそらしたが、闇は広がっていった。

あらゆる場所に。それは彼女がかつて見たことがないほどの闇だった。まるで世界が描かれていた板が片付けられてしまったかのように。

彼女が最後に耳にしたのは、ガラスが粉々に割れる音だった。

Shatter.png

nianticglowsナイアンティック計画
2014/12/02 16:14:23

フェリシア・ハジラ=リーが帰ってきた。デヴラ・ボグダノヴィッチの、ヒューロン・トランスグローバルとの困難で危険を伴う交渉に関するさらなる啓示と共に...

エックス

Felicia Hajra-Lee
2014/12/02 16:11:13

Devra's Interview At Hulong

Catherine Fan had mixed emotions. She felt left out of this operation despite the fact that she was commanding it. Fan had never met Devra Bogdanovich, only spoken to her once when they carved up the corpse of Niantic with ADA's help. Yuen Ni, however, had supervised Dr. Bogdanovich at CERN.

So Ni took the lead in the recruitment.

Fan didn't like it.

Ni was the competition.

Though Fan was putatively her superior, due to the labyrinthine politics of Hulong Transglobal, Ni had a special status Fan found bothersome. And no small part of that status came from her involvement in the Niantic Project, not to mention her prior status as Director of the National Intelligence Agency (NIA) which, oddly enough conveyed a great deal of status despite Hulong's Chinese origins. Was Hulong's agenda to become less Chinese, or did they use shadowy American ties to keep the government at bay. They were not mutually exclusive agendas.

Or was Ni a double agent working for the Chinese government?

Any way around, Fan wanted it all to go away: The Niantic Project, Hank Johnson, Devra Bogdanovich and Yuen Ni. She wished she'd never heard about XM.

"You'll be happy to know that it seems Hank is safe India..." Ni said. It was part of the planned script, but Fan didn't like the way Ni said it. It was as if she'd meant it. Odd thing about Hank Johnson was that nobody seemed to want him dead. Fan had virtually ordered Antoine Smith to kill Johnson in India, but he disobeyed the order. Or more specifically, lived to the letter of the order, but ignored the not-so-veiled subtext of it. Fan could not directly order Johnson's death, but she thought she had made it pretty clear that she would be happy with that outcome.

"No thanks to Hulong, I suspect." Devra answered.

"I have nothing to do with that part of the operation..." Ni responded. That was not in the script. Ni had gone off book. But then Bogdanovich's response had not been among those that the profiling consultants had predicted. Fan hoped that this wasn't just the first of a number of errors.

"No that would be Mr. Smith, wouldn't it?" The American responded. Also not another predicted response. It should have been. Dr. Bogdanovich was nothing if not a gifted researcher. Of course she had been gathering what information she had about Hank Johnson. She and the American Archeologist had gone back a long time. It was unclear whether they had ever been involved in a 'relationship' -- such a vague American term. They had wasted half an hour discussing the annoyingly vague courtship rituals of the Americans.
Ni was back on script. "Devra, just cooperate today..."

"I like you. And I respect you. Hulong can be a good home for you. Our interests are more aligned than you think." The camera angle didn't allow Fan to see her face, but Ni sounded sincere.

The door opened, the camera flashed momentarily blinding Bogdanovich while Ni slipped into the darkness as Hwang's psych team had planned. 'Take away the familiar' was what it said in the brief.

Devra stepped out of the car. She appeared surprised to see Hwang. Check. She looked around. Saw the ascending ramp. There was no escape. She was supposed to be feeling trapped now. Oddly, she didn't look uncomfortable. But Bogdanovich was tough. She was fifteen steps from breaking.

"Good to see you again, Dr. Bogdanovich." Hwong said, bowing.
Devra stuck out her hand. Hwang didn't put his forward. Withhold custom. Remind her she is not in her environment.

Fan waited in the observation room behind the two-way mirror. She contemplated looking at her phone, checking her email. She was weaning herself off of the electrical umbilical. Phone checking is a sign of nervousness. Fan was to create activity, not respond to others. She tried to think of questions to ask, orders to issue, but couldn't think of any. She just sat. She wanted to project serenity. Some executive guide told her serenity is the ultimate manifestation of power and she believed it. Even if she wasn't comfortable of power, she could look like she was.

Devra was led into the room. She picked a seat without hesitation. He had her back to Fan's mirror. She had taken Hwang off balance. She wasn't supposed to pick that one. Fan couldn't help but be amused. She found Hwang's outward appearance of confidence offputting. The walk-through hadn't contemplated Devra taking that seat. Fan would have to watch the interview on a monitor.

"Mrs. Bogdanovich, what do you have to offer us?" Mistake her name. Make her feel unimportant. As if we know little about her.

"I'm not married, Mister Hwang," she responded. "And in this context it is perhaps more relevant that you refer to me as Dr. Bogdanovich."

If Devra was supposed to be: Fearful. Intimidated. Trapped as the brief had indicated. She wasn't acting it.

She went on. "The answer to your question is simple Mr. Hwong.... (did she get his name wrong on purpose?) Salvation. Salvation, Dr. Hwang. If the N'zeer find us, we will be destroyed."

One of the techs in the observation room noted that voice stress analysis detected no indication of deception.

Fan watched with renewed interest. "We are a business, Dr. Bogdanovich. We worry about bottom lines, not existential transdimensional threats. We believe that if you can turn down the portals, you can also turn them up."

"It doesn't work that way." She responded.

Hwang hesitated. His plan had failed. He was beginning to perspire. Fan found herself slightly amused. There was something about the blonde woman that she admired.

Hwang could barely hide his desperation. "Did you bring the last of your XM inoculation with you?"

"Don't you think this interview will go better if we both work under the assumption that neither of us is stupid?" Devra responded.

Hwang took a step back. Like a boxer who had been surprised by a jab. "We do not think you are stupid. But we also know that you are afraid to have it out of your control. You have it, don't you? You might as well tell us. We will find out, of course." Fan smiled. She was actively rooting for the American scientist at this point.

"Who's behind the mirror?" Devra asked. Then she turned around. It was as if she could see through the glass. Could see Fan.

"Where is the last of the inoculation, Devra?"

Bogdanovich stood up. She was tall. She reached into her purse. There was activity in the observation room. Had she been checked for weapons. Bodanovich pulled out a cigarette and lit it. Slowly. Casually. Enjoying the moment. She exhaled smoke in Hwang's direction. She walked towards him, speaking as she walked. "I gave it to Hubert Farlowe. Good luck getting it from him. If I die, I didn't give him any instructions. In order to randomize the outcome. God knows what he'll do with it. Especially when he finds out that I'm dead."

Hwang stepped backwards, against the wall. Looking trapped. Humiliated. But more than that, fearful.

"He will do nothing, because he will have no way of knowing that you are dead." Hwang said. It was not a good answer, but he did not have a better one. And he had to answer.

"The world leaks secrets, Dr. Hwang. We might as well not even try to keep them. You ought to know that. If I die. He will know. If nothing else, he will feel my absence." Then she turned back to the mirror. Took another puff. "But you're right. I didn't give it to Farlowe."

"If you did not give the last injection to Farlowe, what did you do with it. We can negotiate."

She spun around and held up her hand, in front of Hwang's face. He froze. Delicate fingers from her other hand reached up to her ring finger. "This isn't a wedding ring, Dr. Hwang.' The fingers tripped a hidden spring and a needle popped out. "It is a poisoner's ring."

Hwang lost control. He fled to the door. Tried to open it. It was locked.

"You are going to inject me?"

Bogdanovich smiled. "No."

She turned back to the mirror. She jabbed the ring into her neck, near her jugular vein. Blood dripped from the wound, reminding Fan of a vampire movie. Bogdanovich smiled. But with the smile came the darkness. It seemed to emit from her eyes. Fan looked away, but the darkness spread.

Spread everywhere. It was like no darkness she'd ever seen before. It was as if the veneer of he world was being stripped away.

The last thing she heard was the shattering of glass.


Niantic Project
2014/12/02 16:14:23

+Felicia Hajra-Lee returns with more revelations about +Devra Bogdanovich's difficult, perhaps even dangerous negotiations with +Hulong Transglobal...

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